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国民の一人ひとり、特に高齢者が、健康の維持・増進を積極的に配慮した、健やかな長寿につながる生活をしていくようにする。
(五)体育の道
高齢者にあっては、生活手段における自立、経済的自立とともに精神的な自立が強く求められる。元気な老人の増加は、同世代同志の助け合いも可能になる。国民の一人ひとり、特に高齢者が、個人的社会的にみて望ましい平和な生きがいがある生き方のできる諸能力の維持・開発を積極的に配慮した、逞しい長寿につながる生活をする。
したがって、これらの道の実現を国家的な視点で確立する努力が今後強く求められよう。
ここでは、筆者の専門分野と深い関連性のある保健の道・体育の道について消防職員との関連をも配慮しながら考えてみることにする。
一般に、感性的には、前者は「主に健やかな長寿を目指す道」として、後者は「主に逞しい長寿を目指す道」として特徴づけることができよう。これらは、高齢者のみでなく、全ての人にとり、生涯にわたる絶えざる実践の道になることが期待される。
一方、保健実践は体育実践の前提条件にもなることから、広義での体育にも含められよう。一人ひとりに実践が期待される、この二つの道は健やかな、逞しい長寿社会への国民的挑戦の鍵になろう。
三 明るい逞しい長寿を目指す体育の道
この道を確立するためには、その背景になる体育観を共通理解できる方向で確立する必要がある。
逞しい長寿に寄与する体育観の追求
体育は、文字の示す意味からは「人問生命体としての身体を育てること」としてきわめて広く捉えられる。一人ひとりの生命体には身体的及び精神的なことの全てにわたる可能性が内在している。したがって、このような体育は、一人ひとりの可能性を引き出すようにして、人間として生涯を積極的に生きる根本の道になろう。
高齢者とは、一般に死につながる老化が始まる六五歳以上の人を指している。逞しい長寿における「逞しい」とは、この老化の過程をできるだけ健やかに・逞しく・長く生きることである。逞しい長寿には、何よりも逞しい長寿につながる体育の道を確立することが期待される。
表1はわが国にみられる体育観をまとめ示したものになっている。現在、わが国のみでなく国際的にみて表1中1に示す、スポーツ型体育観が支配的になっている。健康体力型体育観も広く支持されている。しかし、いずれの体育観も偏狭な体育の捉え方になっており、真に人間としての望ましい積極的な生き方に寄与する体育の道、逞しい長寿を目指す体育の道を全体として構築することはできない。
筆者らは、半世紀にわたる研究生活の中で、積極的な生きる道になるような体育を理論的実際的に追求してきた。その成果として表1中3の生活・生存型体育観を提唱している。この体育観では、スポーツ型・健康体力型な

表1 わが国に見られる緒体育観

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